Olive cunzate~生のオリーヴを食べる一品

Olive cunzate~生のオリーヴを食べる一品

収穫したオリーヴの、多くは食用油として使います。

イタリアは南北に長いので、一口にオリーヴ油と言っても地方によって味の違いがあり、味の強烈な南イタリアの物、落ち着いた中部イタリア産、そして優しい味のリグーリアとガルダ湖産の物。栽培地の気候の違いもありますが、味は自然にできるのではなく、基本は生産者の味覚にあります。最近は単一品種のオリーヴ油も出回ってきていますが、タジャスカ種を使うリグーリア以外はほとんどがいくつかの品種をあわせ、つまり香りの高い品種、油を多くとれる品種、青臭さが主な品種などの割合を決めて、味を作っているようです。ですから郷土料理を基本とするイタリア料理では、郷土の料理には郷土のオリーヴ油を使うのがあたりまえ。

でもかなり前、テレビショッピングをお手伝いした時に、リグーリア産、トスカーナ産、シチリア産を3本セットにして売り出したところ、ほとんど売れなかったことがありました・・・まさに、時期尚早でした。でも今はかなりのシェフたちが、厨房に何種類ものオリーヴ油を用意して使い分けているようです。地方で合わせる場合と、白身魚は北のオリーヴ油、赤身肉は南のオリーヴ油というように食材と合わせる場合があります。

このように油として、そして調味料としてオリーヴ油を使う場合は各地の味を理解して使い分けるのが基本ですが、もう一つ食材としてオリーヴを使う事もあります。

実ったオリーヴの実

生のオリーヴは、かじってみた方にはお判りでしょうが、本当に渋い。食べてしまったら、いくら口をゆすいでも渋みはなかなか抜けません。でも塩水に浸けて渋みを抜くと、非常に美味しくなって前菜として食卓に置いてあると際限なく幾度も手が出てしまいます。

市場に行くとよくオリーヴ専門店があって、塩水に浸けたもの、緑のオリーヴ、黒のオリーヴ、オーブンに入れたもの、オレンジの皮などで味をつけたものなどが並んでいます。

色の違いは収穫期の違い。早めに摘んだ緑の物、熟し手から収穫した黒いものとありますが、それぞれを料理によって使い分けるのがイタリアです。

市場のオリーヴ店

丸のまま使うのは大粒オリーヴの代表格は「アスコリ風揚げオリーヴ」。これは種を抜いてその中に肉の詰め物をして揚げるという手間のかかった物です。それだけではなく詰め物の材料を見ると、豚肉、牛肉、鶏レバー、卵にパン粉という、かなり豪華な内容です。これはどう考えても忙しいマンマたちの料理であるとは思えません。きっと元は貴族の館で作られていたものなのでしょう。今は大量に作られた冷凍ものもあり、ストリートフードにもなっていますが。

アスコリ風揚げオリーヴ

料理の食材の一つにすれば、オリーヴの実はこっくりとした味で料理に深みを与えますが、面白いのがシチリアの「アリーヴィ クンツァーティAlivi cunzati」。苦くてたまらない生のオリーヴを使った料理です。もちろん苦味は抜きます。

リチェッタには、まず収穫した生のオリーヴを水をかえながら一週間浸けて渋みを除くとあります。それをつぶしたニンニク、野生のフィノッキオとミントに漬け込み塩をして2日間。こうすると水が出てくるので、それを捨て、もう一度ミントとセロリの葉と合わせ、ワインビネガーとオリーヴ油で和えるというもの。ずいぶん時間がかかっていますが、リチェッタの説明には「非常においしくて、出来上がったものは市場や下町で売っている」とあるので、次回シチリアに行った時はぜひとも探してみたいと思います。ホントに、生のオリーヴを食べる料理なんて他にないんですから。


長本和子 NAGAMOTO Kazuko
イタリア料理研究家 劇団青年座在籍当時イタリアに魅せられ、イタリアのホテル学校に留学。その後料理通訳などを経て、プロ向けイタリア料理・ソムリエ現地研修を企画する会社を設立。卒業生は450人ほどになり、日本各地で活躍している。現在は料理を通してイタリア食文化を紹介している料理教室「マンマのイタリア食堂」主宰。日伊協会常務理事。「イタリア好き」に小説連載中。
まだイタリア料理が日本でそれほど知られていないころから、イタリアのほとんどの州を周り、食材の旅をしてきました。現在は料理教室「マンマのイタリア食堂」で、webセミナーリオを行い、郷土料理や食材の歴史や理論を語っています。

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