愛媛フェア2024 開催中
「サーラアマービレ」

ほのかな薫香にビネガーやハーブの香り
豊かなアロマが魚料理を重層的な味わいに

銀座の華やかなビルの最上階に原田慎次さんの世界観を表現する2つの店舗があります。ひとつは、非日常のゴージャス感でゲストをもてなす「アロマフレスカ」、もうひとつは上質なサロンのような「サーラアマービレ」。今回の愛媛フェアでは、両方の店で、「全身トロ」と評されて愛媛県が自信を持って押すブランド魚「媛スマ」を堪能することができます。

天然ものだけでなく養殖魚のよさを
引き出していくのも料理人の仕事

「愛媛県でスマの養殖魚『媛スマ』を育てていることは知っていて、以前から料理してみたいと思っていたんです。ですから、このフェアはとてもよいきっかけになったと思っています」と語る原田シェフ。実際に「媛スマ」を使ってみて、想像していた味とは違っていたそうです。
「もっとカツオに近い味をイメージしていたんですが、マグロに近い。全体的に脂がのっていて、『全身トロ』というのは本当ですね」と感心します。

実は、原田シェフのレストランで用いる魚はほぼ天然魚。養殖ものを使うことはあまりないとのことですが──。
「食料不足の問題はすでに深刻化していますから、天然ものにこだわることなく、養殖魚も取り入れて、もっとも美味しい形で提供するのが料理人の努めだと思っています。それに最近の養殖魚はイやなにおいやクセもなく、なにより衛生面で高く評価できる。安全性の高い食材を選ぶのも重要なことですからね」
その言葉どおり、シェフは「媛スマ」の持ち味を生かし、巧みな料理技術によって、ポテンシャルの高い料理に仕立て上げました。

原田慎次さん
1969年、栃木県生まれ。高校時代、飲食店のアルバイトで料理の面白さを知る。服部栄養専門学校在学中よりアルバイトをはじめた六本木の「ヂーノ」にそのまま入店し、修業を積む。「ヂーノ」2号店で4年間シェフを務めた後、1998年、広尾に「リストランテ アロマフレスカ」をオープンして独立。2010年、同店を銀座に移し、同じフロアに「サーラアマービレ」を開いた。「アロマフレスカ」はミシュランの星付き店としても注目されている。

脂が美味しく、ほどよく身の締まった「媛スマ」
薫香やハーブなどとの相性も抜群

素材のよさを引き出し、原田シェフがモットーとする“アロマ”にこだわったひと品、それが「愛媛県産媛スマのカルパッチョ仕立て」です。
シェフならではの華やかな料理──。その裏にある香りをテーマとする緻密な計算について伺いました。
「十分に脂ののった『媛スマ』は、香りを演出することでより美味しく繊細な風味になると思いました。そこで、下処理の段階から香り付けを工夫しています。
まず下拵えとして、アユの魚醤と太白ゴマ油で30分ほどマリネしました。こうすることで『媛スマ』に風味がつき、少し身がトロっとします。
これを軽くスモークして、そのあと、皮目だけパリっと炭火で焼くんです」

こうして仕上げた『媛スマ』を適当な大きさにカットしたら皿に盛り、トマトやラデッシュなどの野菜、ロックチャイブ、花穂紫蘇などを添えます。
実はラデッシュにもフランボワーズビネガーの香りがつけてあって、それらがフレッシュトマトやハーブと口の中で融合すると、『媛スマ』の旨味がよりさわやかにグレードアップします。

「愛媛県産媛スマのカルパッチョ仕立て」
美味しさのポイント

「実際に『媛スマ』を調理してみて、脂ののりがよいだけでなく、身の締まりもよい魚と感じました。それにクセのないピュアな味わいなので、ロックチャイブのようなハーブとの相性もよく、さらっと召し上がっていただけるひと品に仕上がったのではないでしょうか。
『サーラアマービレ』だけでなく『アロマフレスカ』でも提供予定のカルパチョ仕立て、ぜひ召し上がっていただけたらと思います」

取材・文／上村久留美　撮影／依田佳子