トルコ人の侵略を逃れてヴェネトにやってきた古代ダルマタ人に起源を持つ、モンテ・グラッパの牧場で生まれたチーズです。素晴らしい文化の融合の賜物です。
モルラッコ・デル・グラッパの特徴
モルラッコ・デル・グラッパはスロー・フードに認証された食品で、この地域独特の自然環境が生み出します。生産量が少ないため今日絶滅の危機にあるブルリネ牛がグラッパ山岳地帯で放牧される期間に搾乳された乳がベースです。チーズは円筒型で縞模様があり、最初は白く、時間の経過とともに淡黄色やオレンジ色になります。中身はオフホワイトで、出来上がり直後はかなり固く、あちこちに小さな穴があいています。中身は時間とともに柔らかくなり、最終的にクリーム状になります。長期熟成させると切り口が「したたる」ようになり、一段と強く独特な香りを放つようになります。 辛口で少し酸味があり、ほのかに苦い草の味がします。熟成するほど、その旨味と強くはっきりとした香りは際立ってきます。
モルラッコ・デル・グラッパの生産
モルラッコは夜と朝の2回搾乳した生乳で作ります。2回に分けて搾乳した生乳の「ミックス」は 、 仔牛の胃から抽出した凝乳酵素を加えて銅製の鍋の中でゆっくりと混ぜ、焚き火で38度まで温めます。固まり始めるとまず凝乳物を十字に切り分け、「リラ」と呼ばれるくしのような道具を使ってくるみほどの大きさまで細かく刻みます。次に凝乳物が大鍋の底に沈殿するまで放置します。最後に乳清と分けるため、筒型のざるを使ってすくうようにして凝固乳を集めます。翌日何度か回転させて返したのち、最初の型から外して塩をまぶす作業を数日間繰り返し、一週間以上乾燥しすぎない涼しい場所で熟成させます。モルラッコは1〜2か月熟成させてからが理想的な熟成のタイミングを迎えますが、フレッシュな状態でも味わうことができます。
スクアッケローネ・ディ・ロマーニャのDOP保護原産地呼称
スクアックエローネ・ディ・ロマーニャDOPは、規定で義務付けられた工程を守って生産されています。何世紀にも渡って伝わった生産方法に従い、保存料を一切加えず、地方の伝統を尊重しながら今も継承されるチーズです。今日では市場への迅速な対応と供給管理が課題とされています。スクアッケローネ・ディ・ロマーニャがDOP保護原産地呼称に認証されたことで、市場への対応の第一歩となりました。
山田 美知世
京都市出身。イタリア在住40年。月刊女性誌「amarena」の元編集長。現在も日本とイタリアの雑誌と本の取材、及び執筆活動を続ける。イタリアの国家試験オリーブオイル鑑定士試験に合格、資格を取得(イタリア共和国農林食料政策省オリーブオイル鑑定士登録番号 MI.0023278)。イタリア各地、ニューヨーク、東京、イスラエル、トルコの国際オリーブオイルコンテストの審査員を務める。イタリアでは新聞記者と共著の「ARTE DI SUSHI/寿司という芸術」「ラーメン」「日本の家庭料理」「日本酒と日本のスピリッツ」を出版。