ヴァッレ・ブレンバーナはロンバルディア州全面積の6,5%に及ぶもっとも広い山岳地帯です。貴重なチーズが生産される森や牧草地がある魅力的な地です。
ロンバルディア州アルタ・ヴァッレ・ブレンバーナのフォルマイ・デ・ムット
フォルマイ・デ・ムットは、最初にDOP保護原産地呼称の承認を受けたチーズのひとつです。フォルマイ・デ・ムットとは、夏がくるたびに羊飼いたちが互いに繰り返し声をかけた「ンダ・アル・ムット」つまり山に行こうという昔の表現に由来しています。「ムット」は山というよりチーズ小屋のある山の牧草地を意味しています。このチーズは21の村で生産されていますが、中でもベルガモにあるロンバルディア州立オロビエ公園内にあるアルタ・ヴァッレ・デッレ・ブレンバーナは、もっとも標高の高いところに位置しています。この州立公園は1989年からありますが、ごく最近になって地域の特徴や観光地としての価値が知られるようになりました。
フォルマイ・デ・ムットの栄養素
フォルマイ・デ・ムットは生乳から作られる乳脂肪の高い半加熱したチーズで、アルタ・ヴァル・ブレンバーナのフォルマイ・デ・ムット組合に加盟する生産者たちがこのチーズの保護と促進を目的に定めた規定に則って生産しています。牛が首にぶら下げている「鐘」を表現したロゴとDOPマークを製品に刻印するためには、この規定を守らなければなりません。
フォルマイ・デ・ムットは冬も夏もアルペッジョ方式
今日フォルマイ・デ・ムットは一年中生産されており、昔のように夏季にしか生産しないわけではありません。生産した季節は、製品に付いているマークで区別されます。ブルーは夏の高原放牧場で作られたもの、赤は冬季に村で作られた物ですが、いずれも放牧場と同じ製法で作られています。中身は引き締まって象牙色で「バーズアイ」と言われる小さな穴があいています。外皮は薄くて固く明るい黄色ですが、熟成するとグレーを帯びてきます。円柱形で両面は平たく、側面は真っすぐで重量は8から12kgです。高原と谷で生乳から作られるので、繊細な風味で刺すような辛さは無く、ほのかな塩味です。高原産と谷間産2つの味の差はごくわずかで、冬に牛舎で用いる食用の干し草と夏の飼料となる植物の相違による風味の違いがわかるのは、熟練の専門家だけです。谷間にある専用小屋の木棚に並べて、45日間ほど熟成します。
山田 美知世
京都市出身。イタリア在住40年。月刊女性誌「amarena」の元編集長。現在も日本とイタリアの雑誌と本の取材、及び執筆活動を続ける。イタリアの国家試験オリーブオイル鑑定士試験に合格、資格を取得(イタリア共和国農林食料政策省オリーブオイル鑑定士登録番号 MI.0023278)。イタリア各地、ニューヨーク、東京、イスラエル、トルコの国際オリーブオイルコンテストの審査員を務める。イタリアでは新聞記者と共著の「ARTE DI SUSHI/寿司という芸術」「ラーメン」「日本の家庭料理」「日本酒と日本のスピリッツ」を出版。