伝統の味とされる香り豊かな生乳で作る山のチーズ「モンテ・ヴェロネーゼ」が蘇りました。カザーラ・ロンコラート・ロマーノは、もっとも需要が高く忙しい酪農工場となりました。
イタリア北部のヴェネト州で生産されるモンテ・ヴェロネーゼは、1000年代に起源を持つ貴重なチーズです。当時のヴェローナ北部では、乳製品が通貨の代わりに物々交換として使われていました。モンテ・ヴェロネーゼの生産技術は代々受け継がれ、1993年にはDOP保護原産地呼称に認証されました。この規定では、生産地をヴェローナ北部の丘陵地帯、山岳地帯からバルド山までに制限しています。酪農工場組合は古くから伝わる生産方法も保証しています。モンテ・ヴェロネーゼは、山岳地帯で搾乳する低温殺菌を行なわない生乳で作る味わい豊かなチーズです。このチーズに使われる生乳は人工的な衛生処理を全く行わないため、搾乳場から完璧な状態で出荷されてきます。
モンテ・ヴェロネーゼのチーズの種類
モンテ・ヴェロネーゼはバリエーション豊富なチーズで、成分無調整牛乳で作る生産後30日から食べられるフレッシュなチーズから、長い熟成期間を要するものまであります。モンテ・ヴェロネーゼ・ダッレーボ・メッザーノDOPは90日以上熟成させ、生産後6か月以降に出荷されます。メッザーノは「メッゾ・アンノ」つまり半年という意味で、生産されてから食卓に出されるまでの期間に由来しています。大きさは8-9kg、締まった中身には小さな穴がぽつぽつとあいています。冬に生産されるチーズは牛に乾燥飼料を与えるために白く、新鮮な飼い葉を食べる夏期に生産されるチーズは麦わら色になります。熟成期間が終わる頃には、しっかりコクのある少しピリっとするシャープな味わいになります。モンテ・ヴェロネーゼ・ダッレーボ・ヴェッキオDOPは12か月以上熟成され、18か月以上経ってから出荷されます。このチーズにはより不規則な穴があり、濃厚でピリっとした味わいで、アーモンドやヘーゼルナッツのような香りになります。
栄養価について
モンテ・ヴェロネーゼは栄養的観点からも貴重な食材です。肉より人体に吸収されやすいタンパク質を豊富に含みます。またかなりの脂肪分を含んでいますが、体内で貴重なビタミンAに変化する緑や黄色、そして赤い葉に広がる色素カロテーネを運ぶ働きがあります。
山田 美知世
京都市出身。イタリア在住40年。月刊女性誌「amarena」の元編集長。現在も日本とイタリアの雑誌と本の取材、及び執筆活動を続ける。イタリアの国家試験オリーブオイル鑑定士試験に合格、資格を取得(イタリア共和国農林食料政策省オリーブオイル鑑定士登録番号 MI.0023278)。イタリア各地、ニューヨーク、東京、イスラエル、トルコの国際オリーブオイルコンテストの審査員を務める。イタリアでは新聞記者と共著の「ARTE DI SUSHI/寿司という芸術」「ラーメン」「日本の家庭料理」「日本酒と日本のスピリッツ」を出版。