ピエモンテ産ベッテルマットは山の風味と芳香を楽しむチーズ

ピエモンテ産ベッテルマット・チーズはコンパクトなサイズのペーストで、ゴールドに輝く“チーズ通”向けの特産品です。ゲルマン民族を起源とするヴァルサー人によって作り始められました。

ベッテルマットの生産者

フォンティーナ・チーズに似たしっかりしたペーストで、ゴールドカラーの高原チーズ「ベッテルマット」。このチーズの生産はピエモンテ州最北端に位置し、スイスのヴァレー州とティチーノ州との国境に接するオッソラ渓谷に限定されています。ヴァルサー人の住まいと伝統はこの地域にだけ生き残りました。チーズの由来はゲルマン民族を起源とするヴァルサー人まで遡りますが、今も生産は7月、8月、9月にしか行われていません。

ベッテルマット・チーズは、通常ブルーナ牛という品種の雌牛で、単一種の搾乳による全乳で作られます

ベッテルマット・チーズの特徴

1998年から生産統制がアンティゴーリオ、ディヴェードロ、フォルマッツァのコムニタ・モンターナ(山岳地域の共同体)、現在のオッソラ渓谷のコムニタ・モンターナによって管理され、ベッテルマットは乳脂肪の多い、半加熱されたペースト状のチーズと定義されています。通常ブルーナ牛(ブラウンスイス牛)という品種の雌牛で、単一種の搾乳による全乳(無調整牛乳)で作られます。

生乳は約40分で凝結し始め、続いてフサスグリの果実くらいの大きな粒に分かれ、44〜46度で加熱しながら作ります。その後ファシェーラと呼ばれるチーズ用の枠内に入れた布の中に入れ、12時間加圧し、15日間乾いた状態か塩水につけて塩分を加え、最低60日間熟成します。4~6kgの円筒形で側面の厚さは8cm、直径は25~35cmです。コンパクトなサイズで柔らかく、ゴールドで、ヤマウズラの目のような小さな穴があいていて外皮は滑らかです。このチーズは標高1,800m以上の場所で生産する規定となっています。

出来上がったチーズの表面には、山岳地の原産で生産会社のヨーロッパ経済共同体のマーク「アンティゴーリオ渓谷とフォルマッツァ渓谷で作られた高原チーズ」に加え、製造年月日とシンボルが焼印されます。

その刻印は、チーズの生産開始日から40日後に焼印します。品質統制のため、60日未満の熟成期間では販売することができませんが、3年以上熟成したものは非常に珍しいと言えます。風味と歯ごたえは熟成期間によって微妙に変化するため、味や風味、色など品質を失いかねないからです。その他には、毎年販売最低価格が基準として設定されます。

ベッテルマット。凝乳物は約40分で凝結し、続いてフサスグリの果実くらいの大きな粒に分かれはじめ、44~46度で加熱されます。

牛乳の生産と加工

ベッテルマットの生産は、歴史的にスイスを原産とするブルーナ牛(ブラウンスイス牛)を使いますが、乳牛としての適性と、豊富なタンパク質を誇る生乳の特性から、数十年にわたってブルーナ牛の代わりにアメリカ原産のブラウンスイス牛も使われています。搾乳は通常電動式手です。これは乳牛の移動を少なくさせると牛乳の質がより良くなるためです。

ベッテルマット・チーズは、4~6kgの円筒形で、側面の厚さ8cm、直径25~35cmの形状です

山田 美知世
京都市出身。イタリア在住40年。月刊女性誌「amarena」の元編集長。現在も日本とイタリアの雑誌と本の取材、及び執筆活動を続ける。イタリアの国家試験オリーブオイル鑑定士試験に合格、資格を取得(イタリア共和国農林食料政策省オリーブオイル鑑定士登録番号 MI.0023278)。イタリア各地、ニューヨーク、東京、イスラエル、トルコの国際オリーブオイルコンテストの審査員を務める。イタリアでは新聞記者と共著の「ARTE DI SUSHI/寿司という芸術」「ラーメン」「日本の家庭料理」「日本酒と日本のスピリッツ」を出版。