トスカーナ地方では、イタリアの食文化の代表的でもっともシンプルな食材「パン」が2014年、DOP保護原産地呼称に認証されました。この地域には生産流通体制を最短に改革した麦など「神聖」な材料から生まれる食材が豊富です。
農林水産省は「パーネ・トスカーノプロジェクト」を承認し、2014年にDOPを与えました。パーネ・トスカーノDOPプロジェクトは、2002 年CNA(国立中小業企業連盟)に所属するパン生産者組合と手工業連盟によって生まれました。2004年「パーネ・トスカーノDOP」の推進者委員会、そして製品保護及び販売促進連合組合が組織されたことが、絶滅の危機にあった昔から小麦粉に使用されていた地元原産の麦を蘇えさせる最初の一歩となりました。
パーネ・トスカーノの味と生産
パーネ・トスカーノは四角や丸、楕円形があり、重量は500gから1kg、2kgで、厚さは5cmから10cmです。外皮は砕けやすく、かりっとしています。中には気泡があり、キメはそれほど細かくなく、黄金色でハシバミをローストしたような香りがあります。塩分が無いことから「ショッコ」と呼ばれています。組合はトスカーナ州で栽培された古代からある麦のみを使い、手作業による生産技術を用いることに決めました。赤カリオッシデ種と白カリオッシデ種の麦をミックスした製粉と自然発酵は、際立つ栄養価と美味しさです。発酵にはサワー種か発酵種が使用され、酸性環境と革新的な発酵によって、一般市場のパンに比べて栄養価が高く、消化しやすいパンとなります。重要なポイントは焼き加減で、 熱が澱粉を完全に分解するように、発酵が終わる前に焼かなければなりません。
パーネ・トスカーノの規定
規定は、リボルノ、シエナ、アレッツォやグロッセートで栽培されている、軟質トスカーノ種の麦から含まれています。製粉は規定に則り、定められた麦のみを加工する施設で行う必要があります。パンを作るためには、小麦粉にサワー種と水だけを加えます。パン生地は自然発酵させた後、窯で焼きます。パーネ・トスカーノは特別なロゴと商標によって識別することが可能で、生産工程全てをトレース可能です。他にもトスカーナ州には、古代麦を使用したグロッセートのアルバレーゼパン、アレッツォで作られるヴェルナという穀物で作るヴェルナパンなどがあります。
山田 美知世
京都市出身。イタリア在住40年。月刊女性誌「amarena」の元編集長。現在も日本とイタリアの雑誌と本の取材、及び執筆活動を続ける。イタリアの国家試験オリーブオイル鑑定士試験に合格、資格を取得(イタリア共和国農林食料政策省オリーブオイル鑑定士登録番号 MI.0023278)。イタリア各地、ニューヨーク、東京、イスラエル、トルコの国際オリーブオイルコンテストの審査員を務める。イタリアでは新聞記者と共著の「ARTE DI SUSHI/寿司という芸術」「ラーメン」「日本の家庭料理」「日本酒と日本のスピリッツ」を出版。