【FOODEX JAPAN 2023 イタリア館レポート vol.2】めくるめく「イタリア産チーズ」の世界!

2023年3月7日(火)〜10日(水)の4日間、東京ビッグサイトにて開催されたアジア最大級の食品・飲料展示会「FOODEX JAPAN 2023」。

本記事は、同展におけるイタリア館の開催内容を5回にわたりレポートする第2回目。今回は、イタリア大使館による「イタリア産チーズ特設コーナー」についてお届けします。

毎年好評の「イタリア産チーズ特設コーナー」は今年も大盛況!

「イタリア産チーズ特設コーナー」は、イタリア産チーズをもっと知ってもらうことを目的にしたブース。今年は、講師としてチーズ料理研究家の小野孝予さんが常駐し、おいしくてたのしいイタリア産チーズを紹介しました。

小野孝予さん
チーズ料理研究家、チーズプロフェッショナル(C.P.A.関東幹事)、ソムリエ。料理、チーズ&ワインの教室を主宰。セミナー講師、コラム執筆、企業へのレシピ考案、商品開発、イベント&メディアに多数出演。昨今はちょっと新しいチーズの楽しみ方「チーズアシェット®」提案活動に勤しむ。著書「チーズ☆マジック」 。

そのままでおいしく、料理にも寄り添う「イタリア産チーズ」の奥深さ

ブースの監修も担当した小野さんに、イタリア産チーズの魅力を尋ねました。

イタリアには500種以上のチーズがあると言われています。テープルチーズとしてそのままかじっておいしいという魅力ももちろんありますが、イタリア産チーズはお料理に合うものがとても多く、使いやすいという点も魅力だと思います。

代表的なイタリア料理を思い浮かべても、パスタやピザ、リゾット、カプレーゼなどの前菜、デザートならティラミスといった具合にさまざまな料理でチーズが使われていますよね。イタリアではどの家庭でも必ずチーズが常備されています。

また、日本食や日本人の味覚に寄り添えるチーズが多いのかなという印象があります。グラーナ・パダーノを卵かけごはんにすりおろしてオリーブオイルをたらして、マスカルポーネは西京味噌と合わせてディップにしてもとてもおいしいんですよ。

今回はイタリア産チーズのおいしさだけでなく、“料理に合わせやすく、使いやすい”一面もご紹介できればと、食べるシーンを具体的にイメージしていただけるような展示や提案を心がけました。」

多くの来場者が足を止めて見入っていたのが、趣向を凝らしてイタリア産チーズが展示されたショーケース。

コロナ禍を経て4年ぶりに海外出展者が来日した今年は、原点回帰としてイタリア産チーズの中でも比較的メジャーな16種をセレクト。

▼今回紹介したチーズ
ブッラータ、フォンティーナ DOP、ゴルゴンゾーラDOP ドルチェ/ピッカンテ、グラーナ・パダーノDOP、マスカルポーネ、モッツァレッラ・ディ・ブーファラ・カンパーナDOP、パルミジャーノ・レッジャーノDOP、ペコリーノ・ロマーノDOP、ペコリーノ・サルドDOP ドルチェ/マトゥーロ、プロヴォローネ、リコッタ、タレッジョDOP、ペコリーノ・トスカーノDOP フレスコ/スタジオナート

「それぞれどうやって食べるのかをパッとイメージしやすいように、チーズとマッチする食材や調味料を合わせて展示しました」と小野さん。

例えば、イタリア最古のチーズとして名高い「ペコリーノ・ロマーノ DOP」。現在は主にサルデーニャ島を中心に生産される羊乳を使ったハードチーズで、カルボナーラに使われるチーズとして広く知られています。

イタリアではペコリーノといえば、そら豆との組み合わせが大定番! オリーブオイルと黒胡椒をかければ、イタリアの春の名物が完成します。とくにトスカーナ地方では毎年5月1日の祝日は、“そら豆とペコリーノを食べる日”として親しまれ、その日はあちらこちらでその組み合わせを楽しむ光景が見られます。

ペコリーノの強めな塩味と羊乳チーズならでは独特なコクのある旨味が、そら豆のおいしさを引き立ててくれます。そういったイタリア流の食べ方を想像できる展示は大好評を博し、ショーケースの撮影をする方を多く見かけました。

ブース内では、イタリア産チーズ各種を使ったアレンジレシピ24種も紹介。レシピでは、基本的にショーケースで展示するチーズや、日本でも比較的手に入りやすいメジャーなチーズを使用しています。

有名シェフ考案のレシピや、料理レシピ動画サービス「クラシル」に掲載のレシピなど、ごく簡単な料理から本格的な一品まで幅広く展示し、QRコードを読み取ることでレシピは自由に持ち帰ることも。また、一部のレシピはブース内で動画を流し、関心を集めていました。

展示していたレシピの一部は、以下サイトでご覧いただけます。

イタリア大使館 貿易促進部「おいしく たのしい イタリアチーズ」
https://www.ice-tokyo.or.jp/italia-cheese

ブースでは各日二回ずつ、計8種のチーズの試食も開催。「チーズの名前は知っていても、どうやって食べたらいいのかわからないという方が多くいらっしゃるので、今回はちょっとしたアレンジを加えて試食していただきました」と小野さん。

イタリアチーズの王様とも称される『パルミジャーノ・レッジャーノDOP』は、しっかりとしたコクと旨味に豊かな香りのチーズ。そのまま単体でも素晴らしい味わいが楽しめますが、試食ではバルサミコソースをかけたものが振る舞われました。

バルサミコ酢の濃厚な甘味とまるい酸味が加わることで、パルミジャーノの旨味がぐんと際立ち、ワインを誘う魅惑的な味わいにアップグレード。試食する人たちからは「バルサミコをかけただけでこんなに雰囲気が変わるの?」という驚きの声が上がりました。

日本でもよく知られたブルーチーズ「ゴルゴンゾーラDOP」の試食では、やさしい風味の「ドルチェ」と刺激的な味わいの「ピッカンテ」の食べ比べを体験していただきました。

ゴルゴンゾーラという名前は大変有名ですが、味わいが2種類あることは意外に知られていません。日本では、ねっとりした食感で風味がマイルドな“ドルチェ”の方が人気のようですが、私自身は青カビの風味や味わいがしっかりした“ピッカンテ”の方が好みです。

ピッカンテが少しスパイシー過ぎるなと感じるときは、バターを合わせたり、生クリームを混ぜたりと、風味をやわらかくすることもできます。そういった食べ方も知っていただければと、今回はハチミツとクラッカーを添えてご試食いただきました。

今回提案したのは、イタリアではごくスタンダードな食べ方。お客さまからも『ほんのちょこっと何かを添えるだけでもチーズの味わいが広がるのね』なんてお言葉もいただき、イタリアチーズのおいしさや楽しさを知っていただけたのではと感じています」(小野さん)

ブースでは来場者に向けて、知っているイタリア産チーズや、イタリア産チーズについて関心のあることなどを尋ねるアンケートも実施しました。

アンケートや来場者からの質問でも多かったのは、“チーズの保存方法に関する不安”だと言います。微生物が生きているチーズは表面にカビが生えたりすることも多いのですが、カビが生えたらもう食べられないと考える方がまだまだ多いようです。

チーズのタイプによっても異なりますが、ハードチーズ、またはセミハードチーズであれば、カビの生えた部分を削いでいただければ残りの部分はおいしく食べられます。表面のぬるぬるはチーズの脂が溶け出したものなので、キッチンペーパーなどで軽く抑えれば問題ありません。

大切なのは、チーズタイプごとに適した保存方法を知ること。ブースでは、チーズタイプごとの保存方法も記載した冊子を配布。冊子では、チーズタイプごとの食べ方や、さまざまなイタリア産チーズも紹介しています。

ブースで配布した冊子は、以下リンクからPDFでもご覧いただけます。
おいしく たのしい イタリアチーズ」(イタリア大使館 貿易促進部)

今回イタリア館には、チーズを取り扱うメーカー14社が出展し、チーズコーナーでも各ブースの場所を載せたマップを用意し、案内を行いました。

ひとつひとつのイタリア産チーズにはそれぞれの物語があります。地域性や歴史も含めた背景を知っていくこともチーズの楽しさだと思います。

名前の由来もおもしろくて、例えば、日本でもおなじみの『モッツァレッラ』は、イタリア語で“引きちぎる”という意味。熱湯を加えながら練って引きちぎるイタリア産チーズ特有の作り方から付いた名前です。

そういったストーリーを知ることで味わい方も変わってきますし、何より記憶に残るひと皿になります。一般の方はもとより、飲食店の方はそういったストーリーの語り手となり、イタリア産チーズを活用していただければと思います。」(小野さん)