カブの中のカブ「チーマ・ディ・ラーパ」

農家や庶民の代表食材「チーマ・ディ・ラーパ」は、その心地よい特徴的な苦みが人気で、現在では高級レストランのメニューのひとつです。

イタリアでは、「カブ頭!(ばか者)」「カブほどの価値もない!(くだらないやつだ)」「カブからは血すら取れない!(無駄なことだ)」という表現があるように、カブは料理にほとんど使えないと言われてきました。でも先入観を取り払えば、チーマ・ディ・ラーパやキャベツ、ブロッコリーといったアブラナ科の野菜は栄養価が高く、満腹感を感じられ、何よりとても美味しい野菜です。

イタリアでは広くカブの葉を「チーマ・ディ・ラーパ」と呼び、同じ野菜をトスカーナではラピーニ、もしくはラーペ・アマーレ、ナポリではトルツェッレ、フリアリエッリ、ローマでは強い苦みを持つタンニなど、さまざまな名やバリエーションがあります。

起源は北ヨーロッパと言われ、低い気温でも育つラーペ・ビアンケと呼ばれる品種が基とされています。

逆に葉の部分が中心のチーマ・ディ・ラーパは穏やかな地中海気候でよく育ち、イタリアでの生産は気温が高く乾燥した気候で痩せた土壌の南イタリアに集中しています。

味の特徴

チーマ・ディ・ラーパは、花が開く前の蕾と深い緑色の小さい葉、そして柔らかい茎を食べます。口の中にほろ苦い味が広がり、料理に応じてトウガラシのような辛いものと合わせます。元々庶民の食材とされていたために、オイルや油脂といったカロリーの高いものと合わせて調理します。

調理の際にはまず茹で、しっかり水分を絞りとり、その後ニンニクとトウガラシを合わせてオリーブオイルでソテーしたり、ナポリのフリアリエッリのようにラードで揚げたり、トスカーナのプレッツェやポッレンツォーレのようにパンチェッタのスライスと合わせてソテーするのがお勧めです。 中でももっともポピュラーなレシピは、プーリア特産のパスタ「オレッキエッテ」とあえる「オレッキエッテ・ディ・チーマ・ディ・ラーパ」です。

カブの中のカブ「チーマ・ディ・ラーパ」

栄養価

チーマ・ディ・ラーパ100g(食用部分は全体の60%)にはわずかな脂質しか含まれておらず、ミネラルやビタミンなどの栄養価が豊富で、神経細胞や血液を作る働きに優れた効果があります。この野菜のカルシウム97 mgは、牛乳よりも高いカルシウム含有量です。

注目はカリウム(300mg)の存在で、脂肪燃焼、塩分と水分のバランスや心肺機能を助けます。ビタミンC(112 mg:オレンジの約2倍)、A(225μg)、B2(0.16 mg)も沢山含まれ、精神のバランスや身体の栄養バランスに効果があります。また鉄分(1,5mg)と結びついてヘモグロビンを作るクロロフィルも豊富に含んでいるので、貧血も改善します。


山田 美知世
京都市出身。イタリア在住40年。月刊女性誌「amarena」の元編集長。現在も日本とイタリアの雑誌と本の取材、及び執筆活動を続ける。イタリアの国家試験オリーブオイル鑑定士試験に合格、資格を取得(イタリア共和国農林食料政策省オリーブオイル鑑定士登録番号 MI.0023278)。イタリア各地、ニューヨーク、東京、イスラエル、トルコの国際オリーブオイルコンテストの審査員を務める。イタリアでは新聞記者と共著の「ARTE DI SUSHI/寿司という芸術」「ラーメン」「日本の家庭料理」「日本酒と日本のスピリッツ」を出版。