カゼンティーノ

カゼンティーノ

イタリア中部アレッツォ渓谷の美食とワイン

カゼンティーノは、トスカーナ州アレッツォにある4つの主要な谷のひとつです。山の裾野に広がる森と平野、谷間に続く丘がこの地方を代表する風景です。カぜンティーノ国立森林公園は5000ヘクタールに広がる森で、ヨーロッパでもっとも古い自然公園です。サッソ・フラティーノ自然保護区域には、もみ、栗、ぶな、オークなど幾千本の古代樹木が今も生い茂っています。カぜンティーノはこの地域を特徴付ける数多くの塔、小さな要塞、城、村、教会、旧石器時代まで遡る遺跡が長い歴史を誇っています。また石、木、鉄を材料とする職人工芸も盛んです。

カゼンティーノの特産品

この地域には多くの特産品がありますが、中でもパタータ・ロッサDOPはこの地方ならではの逸品です。1800年代から栽培されている丸くぼこぼこした形のジャガイモです。外皮が赤いため果肉にも薄い赤色の模様が入っています。この地域のゾルフィーノ豆は、硫黄を意味するゾルフォのような薄い黄色のためこの名がつけられました。皮が非常に薄いために消化が良く、濃厚な味わいで、硬いながらクリームのような食感があります。アッブッチャート・チーズは、熟成させるほど外皮の色が濃くなり硬くなることからこの名で呼ばれています。中身は優しい麦色で生乳で作るチーズ特有の「小さな穴」があいています。このチーズには強い草の味とわずかな苦みがあり、花の香りがします。栗の粉は甘く、明るいヘーゼルナッツ色で細かく挽かれています。薪を使って乾燥させているため、焼いたような香ばしい味わいが人気の特徴です。またエキストラバージン・オリーブオイルのIGPコッリーネ・ディ・アレッツォも特産として知られています。

カゼンティーノのキアナ牛とグレーの豚マイアーレ・グリージョ

キアナ牛はイタリアでもっとも古い牛品種のひとつです。キアナ牛の伝統料理は沢山ありますが、すね肉を長時間かけて煮込んだペポーゾ・アラ・フォルナチーナは特に有名です。カぜンティーノではサンジョヴェーゼ・ワインで長時間煮込むレシピや、胃や臓物を使う料理もあります。この地域では古い品種とラージ・ホワイトを交配させたグレーの豚マイアーレ・グリージョが飼育され、生ハムやソーセージ、サンブデッリソーセージを作っています。豚の腿肉をカットしてマッサージしてからニンニクや胡椒、唐辛子など香草で味付けしたプロシュット・ディ・カぜンティーノは、豊かな香りと深い味わいが魅力です。


山田 美知世
京都市出身。イタリア在住40年。月刊女性誌「amarena」の元編集長。現在も日本とイタリアの雑誌と本の取材、及び執筆活動を続ける。イタリアの国家試験オリーブオイル鑑定士試験に合格、資格を取得(イタリア共和国農林食料政策省オリーブオイル鑑定士登録番号 MI.0023278)。イタリア各地、ニューヨーク、東京、イスラエル、トルコの国際オリーブオイルコンテストの審査員を務める。イタリアでは新聞記者と共著の「ARTE DI SUSHI/寿司という芸術」「ラーメン」「日本の家庭料理」「日本酒と日本のスピリッツ」を出版。