東京「Galloガッロ 四谷」で青森フェア開催中
陸奥湾産ムール貝やかぶとすっぽんなど
青森県ならではの食材で作る旨味たっぷりのスープが人気

食材はもちろん、アルコール類についても、「強い意志と情熱をもって手掛けている生産者さんにお会いすると心動かされ、料理人としてはそれを使ってみたいと思うんです」と語る小川拓真シェフ。今回の青森フェアで使う食材も、現地を訪れ、生産者との会話を通して自ら選んだ納得の食材ばかりです。

フェア用の食材を見極めるため、今年の6月に青森県を訪れた小川シェフ。「熱心な生産者さんばかりで、特に養殖の様子を見学して、試食もさせていただいた陸奥湾産ムール貝は素晴らしかった」と言う。

料理人のことを考えた
ていねいな下処理に心動かされて

「実際に生産者さんや漁師さんなどとお会いして、食材の品質のよさを確かめるだけでなく、その背景にあるストーリーまで聞くのが楽しいんです。そうした中から、自分の料理に合う食材を選んでいます」と小川シェフ。
忙しい仕事の合間をぬって、全国の生産者を訪ねる一方、自らも東京郊外で野菜栽培に力を入れているから、「多少なりとも生産者さんの苦労が理解できているのではないかと思っています」と続けます。
「青森県でも、熱心な生産者さんに会いました。なかでも印象深かったのが陸奥湾産ムール貝の生産者さん。漁場まで船を出して案内していただきました。料理人たちが届いてすぐに調理できるように、ひとつひとつ貝をきれいに磨くという、その手間も惜しまない。ムール貝そのものが大きく、旨味たっぷりなのはもちろんですが、そうした細やかな気遣いに心動かされて……。料理人なら絶対使いたくなるって思いましたね」

陸奥湾産ムール貝。シェフのもとには、きれいにそうじされた状態で届く。

陸奥湾産ムール貝を使い、シェフが作り始めたのが「青森カッチュッコ」です。
カッチュッコとは、イタリアで親しまれている魚介のスープで、市場に大量の魚介が並んだ時に作る旨味たっぷりのスープだそうです。
「この店でも多くの小魚が届いたときに作ります。サイズの小さな魚は“雑魚”としてはじかれてしまい市場には並ばない。でも、味に変わりはありませんから破棄するのはもったいないですよね。僕はそうした魚を仕入れて、このスープにするようにしているんです」
今回のフェアで提供するカッチュッコには、いつもの小魚に陸奥湾産ムール貝と兜すっぽんをプラス。より旨味の濃い、コラーゲンたっぷりの魚介スープに仕上がりました。

「青森カッチュッコ」に用いたのは、兜すっぽん。青森県東部、東北町にあるモール温泉で飼育されている。水槽内は、源泉を引いて年中掛け流し。衛生的な環境や餌にもこだわっているために成長もよく、コラーゲン、ミネラル、ビタミンなどをたっぷり含むすっぽんに育つという。

「まず小魚に粉をふって香ばしく焼き上げることから始めます。魚にある程度火が通ったら、ゆでた兜すっぽんの身を入れ、すっぽんをゆでた際の出汁に赤ワインやトマトなどを合わせたスープを加えて煮込みます。最後にムール貝を入れて完成」
この料理にはシェフ自ら焼いたトスカーナパンも添えて提供します。
「イタリアではパンと一緒に楽しむ料理なので、フェアでもそのスタイルに合わせています。兜すっぽんを加えたことで、より贅沢で複雑味のあるスープになったと思いますので、ぜひ、この機会に味わっていただきたいですね」

小魚に火が通ったら、自家製のスープ(材料は、兜すっぽんの出汁、魚のアラからとった出汁、トマト、赤ワイン、ソフリットなど)とゆでた兜すっぽんの身を入れて5分ほど煮込み、最後にムール貝を入れて仕上げる。
「青森カッチュッコ」。濃厚な魚介のスープには自家製のトスカーナパンが欠かせない。

豊富な青森県産の食材の中でも
少し変わったものにトライしてみたかった

実は小川シェフ、生にんにくや黒にんにくなど、青森県産の食材は以前から使っていると言います。
「だからフェアでは、ちょっと変わった食材にトライしてみたいと思い、それで、陸奥湾産ムール貝や兜すっぽんのほか、馬肉を使うことにしたんです」
馬肉を取り入れた料理のメニュー名は、「ロコ・シキ熟成カチョカバッロと青森馬のカルパッチョ」。馬肉の上赤身部分を薄切りにし、青森県産の生にんにくや黒にんにく、さらにロコ・シキ熟成カチョカバッロと一緒に盛り付けます。
カチョカバッロとは、材料をお湯で練りながら形をととのえたひょうたん型のチーズ。ひもで縛ってつるして熟成させる様子が、馬の鞍に袋をつるす姿に似ているとして、カチョカバッロ(馬のチーズ)と呼ばれるようになりました。
ロコ・シキは、このチーズを手掛けている会社の名前で、安全で美味しい食材をお届けすることをモットーとしています。

馬肉、生にんにく、黒にんにくをスライスして盛ったら、塩とオリーブオイルを加え、カチョカバッロを削ってのせる。
「ロコ・シキ熟成カチョカバッロと青森馬のカルパッチョ」。一般的にイタリア料理には馬肉を用いないが、「美味しくてクセがないので使ってみたいと思いました」とシェフ。「それに馬肉と相性のよいにんにくについては以前から青森県産を使っていたので、これらを合わせてみようと考えたんです」。

「にんにくやチーズを馬肉に巻いて召し上がっていただいてもいいですし、もちろん別々でも。ワイン、日本酒、焼酎など、どんなお酒にも合う料理なので、自由に味わっていただけたらと思います」
というのも「Gallo 四谷」には、多種多様なドリンクが用意されていて、特にワインについては、イタリアワインを中心に、200~300種が揃っています。
料理に関しても、焼き鳥から本格的なイタリア料理まで、いろいろ楽しめるのがこの店の特長です。
「イタリアから帰国して、さて、どんな店を展開しようかと思ったとき、単にイタリア料理だけでは面白みに欠ける気がしたんですね。今や料理のジャンルにこだわらない料理人も少なくない。料理もミックスカルチャーが面白いのではないかとひらめきました」
お酒も食材も、全国の美味しいものを集めて、小川流に上手にミックス。「オリーブオイルや塩、モッツァレッラなどはイタリア産が気に入っているから、もちろんイタリアもミックスね」と笑う。
そんなシェフが創り出すフェアの料理には、青森の風土と食文化もミックス。開催中のフェアでは、こうして生まれた「Gallo 四谷」独自のひと皿が人気を集めています。

小川拓真さん
1991年、神奈川県生まれ。幼い頃から「食」に興味があり、高校卒業後は栄養士の専門学校へ。調理だけでなく栄養学についても学んだ。イタリア料理を提供する店を中心にキャリアを積み、2014年、「炭火焼き鳥とワインのお店 Gallo 四谷」のシェフに抜擢される。各地の生産者を訪ねて食材を厳選し、店のスタッフとともに野菜作りにも汗を流す。

炭火焼き鳥と自然派ワインのお店 Gallo (ガッロ) 四谷

東京都新宿区四谷3-9-18 慶和ビル2F
TEL 03-5341-4550
18:00~0:00(土は17:00~23:00)
日休

青森フェア 開催期間 2024年10月1日~31日

問い合わせ先
青森県農林水産部食ブランド・流通推進課
TEL 017-734-9573


取材・文/上村久留美 撮影/依田佳子