ズッキーニのターバン

<ACCI Gusto 2021 杉浦仁志シェフ デモンストレーション>
ヴィーガン料理の基本は“香り”
柑橘やハーブなどの風味で食材同士をつなぐ

ズッキーニのターバン
主食材のズッキーニが美しくデザインされた「ズッキーニのターバン」。香り豊かで食感も楽しい。

日本でヴィーガン料理に取り組んでいるレストランはまだ少数ですが、欧米で本格化するヴィーガンという潮流に対して、日本でも真剣に受け止める段階にきていると杉浦シェフはアドバイスします。

杉浦仁志さん
大阪府出身。2009年に渡米し、数々の星付き店で技術と感性を磨く。17年、野菜のみを使用した料理の世界大会“The Vegetarian Chance”でトップ8シェフに選出される。その他受賞歴多数。19年、ONODERA GROUPのエグゼクティブシェフに就任。

世界各国の料理に精通している杉浦仁志シェフは、「今後は日本でもヴィーガン料理に対する理解や研究が欠かせない」と言います。そこで、今回のデモンストレーションのテーマにもヴィーガンを選択。基礎知識とメニュー開発のヒントになるような料理を紹介してくれました。
「まず、ヴィーガンとは何か――。ヴィーガン=ベジタリアンと思っている方も少なくないと思いますが、ヴィーガンはベジタリアンの一部で、ベジタリアンを突き詰めた、その究極のスタイルということになります」

ヴィーガンとは、肉や魚、乳製品などを一切摂取しない完全菜食主義者のこと。

とはいえ、そうした人たちを対象に一体どのような料理を作ったらいいかわからないという人は少なくないでしょう。
「肉や魚を使えれば、動物性の旨味やコクを出すことは簡単なのですが、ヴィーガンではそれができない。そこで活用するのが“香り”。というのも人間がものを食べる際、味わいの情報の約7割を嗅覚でキャッチしていて、味覚で受け取る情報は3割にすぎないといわれているからなんです。ですから、嗅覚に香りでアプローチしようというわけなんですね。
食材を決める際、食材同士の相性を考えるのは基本ですが、一方、食材同士の橋渡しとして香りを利用すると、より良いフードペアリングが完成するんです」
この言葉通り、「ズッキーニのターバン」では、ライムリーフ、レモングラス、レモンの皮、クミンシード、ニンニク、たまり醬油など、香りのエッセンスがふんだんに使われていました。

「ズッキーニのターバン」の材料
太白胡麻油にレモンの皮、レモンバーム、ライムリーフを加えてシトラスオイルを作る。「シトラスオイル作りには太白胡麻油のように香りが穏やかなものが適している」と杉浦シェフ。

「今回の料理は、ズッキーニとその他の食材を柑橘やハーブの香りなどでつなぐ1例で、たまり醤油も用いています。醤油については、“和食に使うべき調味料”として、フランス料理やイタリア料理のシェフの中にはあえて使わないと決めている人もいますが、味に深みや余韻を与えるという点で醤油は効果的。ヴィーガンに料理に活用したい調味のひとつです」
また香りと同時に、「ひと皿でさまざまに異なる食感を表現するのも効果的」と、野菜に大豆ミート、キヌアパフ、アーモンドなどを組み合わせて食感に幅を出しています。
さらに主食材のズッキーニは薄くスライスして、見た目の美しさ、精細さも追求。

スライスしたズッキーニを縦半分に切り、ライムリーフを挟みながら重ねていく。


「ヴィーガン料理だけでなく、これからの料理人には、野菜のデザイン力が求められると思います」
食材の組み合わせ方、効果的な香り使い、高いデザイン性など、ヴィーガン料理を極めることで磨かれていく感性。ヴィーガン料理への取り組みは、それ以外のメニュー作りや、またサステナブルの面でも、良い効果をもたらすことになりそうです。

ズッキーニのターバン

 ズッキーニのターバン

材料(1人分)

ズッキーニのターバン
ズッキーニ ・・・ 40g
ライムリーフ(糸状に切る) ・・・ 0.3g
シトラスオイル ・・・ 5g(以下は作りやすい分量)
 太白胡麻油 ・・・ 100g
(A)
 レモンの皮(ピーラーでむく) ・・・ 1/2個分
 ライムリーフ ・・・ 2枚
 レモンバーム ・・・ 2本

ターバンベース
太白胡麻油 ・・・ 12g
(B)
 ズッキーニ(みじん切り) ・・・ 8g
 ニンジン(みじん切り) ・・・ 8g
 タマネギ(みじん切り) ・・・ 50g
(C)
 ニンニク(粗くきざむ) ・・・ 3g
 クミンシード ・・・ 5g

大豆ミート ・・・ 5g
アーモンド(みじん切り) ・・・ 5g
たまり醤油 ・・・ 5g

キヌアパフ ・・・ 少量
 キヌア ・・・ 適量
 太白胡麻油 ・・・ 適量
 塩 ・・・ 適量

仕上げ
トルコ・タリシュ社/ドライド・フィグ(乾燥白イチジク) ・・・ 適量
ディルの花 ・・・ 適量


作り方

ズッキーニのターバン
1. シトラスオイルを作る。太白胡麻油に(A)を浸け込み、常温で2~3日間おく。
2. ズッキーニを縦に半分に切り、マンドリンスライサーで2㎜の薄さにスライスする。これをさらに縦半分に切り、ライムリーフを挟みながら皮目が上下交互になるように重ねる。形を整え、余分な部分を切り落とす。
3. 2 に塩少量(分量外)をまぶし、1 で10分間マリネする。

ターバンベース
1. フライパンに太白胡麻油6gを入れて熱し、(B)を加えて軽く炒める。
2. フライパンの脇に 1 の野菜を寄せ、空いたスペースに太白胡麻油6gを入れて(C)を炒める。(C)の香りが立ってきたら、下ごしらえした大豆ミート(後述)、アーモンドを加え、フライパン内のすべての要素を混ぜ合わせ、たまり醤油で味をととのえる。キヌアパフ(後述)を加えて混ぜる。

大豆ミートの下ごしらえ
1. 大豆ミートを戻す。ボウルに40~50℃の湯を張って大豆ミートを入れ、大豆ミートに水分を含ませるように揉む。湯が白く濁ったら湯を捨て、大豆ミートの水気をしっかり絞る。この工程を湯があまり白く濁らなくなるまで2~3回繰り返す。
2. 1 にたまり醤油(分量外)を揉み込み、下味をつける。

キヌアパフ
1. キヌアをゆでた後、165℃のスチームコンベクションオーブン(無風モード)で外側はカリッと、内部は少し水分が残っている程度に乾燥させる。
2. 太白胡麻油を195~200℃に熱し、1 を弾けるまで揚げる。油をきり、塩をふる。

仕上げ
1. 皿にターバンベースを敷き、その上にズッキーニのターバンを盛る。乾燥白イチジクの果肉、ディルの花(エディブルフラワー)をあしらう。