福岡県イチ押し食材の「王リンギ」「はかた地どり」「秋王」が「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」の技と融合

料理人の多くは日々情報更新に努め、日本各地の旬を大切により新鮮でおいしい食材を求めて自らの料理に反映させています。銀座で25年、不動の人気を維持する「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」のオーナーシェフ落合務さんと総料理長の成田直己さんもそのうちのひとりです。2人のトップシェフが今回注目したのは福岡県自慢の食材。シェフたちの熟練の技が、福岡県産の食材を一層輝かせます。

「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」の落合務さんと成田直己さんは幾度も福岡県を訪れ、食材との出会いや生産者とのふれあいを大切にしてきた。

福岡県をよく知る2人のシェフだから提案できる
オリジナリティー溢れる「福岡県の食フェア」

「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」のメニューには、「新鮮なウニのスパゲティー」をはじめとする人気のスペシャリテが並び、プロからアマまで、とにかくおいしいものが大好きという人たちを満足させ続けています。コスパの良さでもファンを裏切らない点が、長年予約の途切れない理由といえるでしょう。
そんな「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」では、現在、「福岡県の食フェア」を開催中(11月中の予定)。通常の人気メニューに加えて福岡県産の食材を使った料理を楽しむことができます。
このフェアに向けて、落合シェフと成田シェフは、福岡県の畑や工場などの生産現場を複数回にわたって訪ねています。
そして今回、フェアの食材として選ばれたのが、ジューシーで歯切れの良い肉質が特長の「はかた地どり」、弾力ある食感のキノコの「王リンギ」、大玉で糖度が高くサクサクとした歯触りの柿の「秋王」です。

「王リンギ」とは福岡県が独自に開発したキノコの品種。エリンギよりも大ぶりで色は白く、アワビによく似た食感が料理人たちに注目されています。「福岡の食フェア」では、これをスパゲティーに取り入れました。

「王リンギ入り小柱のクリームソーススパゲティー」は濃厚なクリームバスタ。具材タップリのクリームソースに茹で上がったスパゲティーを入れたら、パルメザンチーズをふって手早く仕上げる。

このメニューを考案した理由について成田シェフは、「加熱しても王リンギの歯応えはそのままなので、クリーム系のしっかりしたソースにも負けない。小柱やアスパラガスとの食感の違い、旨味とともに楽しんでいただけたらと思います」と言います。
落合シェフは食材そのものの持ち味はもちろん、「キノコの工場を視察した際、つねによりおいしいキノコの研究開発を目指す担当者の方々の熱意にも感心させられました」と語ります。

「王リンギ」「ぶなしめじ」「えのき」「ぬめりすぎたけ」「えのき」など、福岡県産のキノコは種類も豊富。

一方、「はかた地どり」は、イタリアの伝統的な料理のカチャトーラに仕上げました。これについて、「はかり地どりは肉質がしっかりしているので、酸味のある骨太なソースにも負けることなく馴染むと思い、この料理に取り入れようと発想しました」と成田シェフ。

「はかた地どり」の旨味と、ほどよい酸味のソースが調和した「はかた地どりのカチャトーラ」。「この地どりは煮込んでも形が崩れないのでさまざまなメイン料理に応用できますね」と成田シェフ。

両シェフとも「はかた地どり」の鶏舎は視察済みで、さらに成田シェフは、「ヒナからしっかり管理されて衛生的に肥育されていたので、味だけでなく安全面でも信頼できました」と振り返ります。

研究開発に費やした歳月は10年以上
世界に先駆けて誕生した種なし甘柿の「秋王」

デザートのおいしさにも定評のある「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」。その食材として選んだのが、福岡県のオリジナル品種の柿で他に類を見ない食感の「秋王」です。
「生ハムと合わせ、『秋王と生ハム』というメニュー名でご提供しています。通常、生ハムにはイチジクやメロンを合わせるのですが、生ハムは柿との相性も良いので、ゲストにはこれまでとは違う風味や歯触りを堪能していただけると思います」(成田シェフ)

「秋王と生ハム」。フルーツのみずみずしさを堪能してほしいので、「秋王」は注文が入ってからカットするようにしているという。

つい最近、落合シェフは「秋王」の果樹園を見学。そのおいしさと安全性、そしてここでも生産に携わる人たちの熱意を実感したそうです。
これを裏付けるように、「秋王」の開発から生産、販路拡大にも力を注いできた全国農業協同組合連合会 福岡県本部の進藤嘉文さんは言います。
「さまざまな果樹を手掛けてきましたが、なかでも『秋王』は栽培が難しく、大玉で鮮やかな色、高い糖度、それでいてサクサクとした食感を実現するまでには10年以上かかりました。甘柿で種がないのも世界初です。
その甲斐あって、『おいしく美しく、調理もしやすい』ということで人気を集めていますが、私たちはこれが完成形とは思っていません。果実栽培に終わりはなく、生産量ももっと伸ばしていきたいと考えています」

「生産量を増やして多くの人に『柿王』を味わっていただきたい」と抱負を語るJA全農ふくれんの進藤さん。

今後も品質や生産性の向上に努めたいと意欲をにじませる進藤さんたちにとって、「料理人の方たちの評価は励みになります」。
これからも福岡県からはオリジナリティーあふれる食材が誕生し、それがトップシェフたちの感性や高度な技術と融合することで、より豊かな食の世界が広がっていくことでしょう。

落合 務さん

フランス料理を志してニューオータニに入社するが、その後、イタリア料理に転向。1978年に渡伊し、4年間の修業生活を送る。帰国後、赤坂の「グラナータ」の料理長を経て、1997年、銀座に「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」をオープン。現・日本イタリア料理協会名誉会長。

成田直己さん

1968年、青森県生まれ。専門学校を卒業後、青山「アントニオ」、赤坂「グラナータ」などで修業したあと、渡伊。ローマやナポリで1年ほど腕を磨く。帰国後、「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」の総料理長に就任。

LA BETTOLA da Ochiai
東京都中央区銀座1-21-2
TEL 03-3567-5656
【火~木】
11:30〜14:00LO
18:00〜21:00閉店
【金・土・祝】
11:30〜14:00LO
18:00〜22:30閉店
日・月休

取材・文/上村久留美 撮影/依田佳子、濱田陽守