「銀座 レカン」で青森フェア開催中
トラディショナルなフランス料理と
青森県食材との美しくおいしい調和が楽しめる

「青森県産仔鴨のロティ あおもりカシスのソース 黒トリュフとコンテチーズのガレット」は、「銀座 レカン」で開催中の青森フェアで味わえる栗田シェフ渾身のひと皿。

東京の一等地で50年、老舗グランメゾンとしての歴史を刻み続けてきた「銀座 レカン」。8代目総料理長の栗田雄平さんは、「伝統を大切にしながら変化を恐れずに進んでいきたい」と言います。そんな栗田総料理長が、青森県の食材の魅力を引き出した今回の料理。栗田流の独特な食材使いの源は、実力派ならではのおいしさへの探求心と、生産者や食材への感謝の気持ちです。

甘味と酸味のバランスが絶妙の「あおもりカシス」
葉を煮出して作ったカシス茶も美味

今回の青森フェアで、トップシェフの栗田さんが自信をもって提供するメイン料理が、「青森県産仔鴨のロティ あおもりカシスのソース 黒トリュフとコンテチーズのガレット」です。青森県で肥育されているバルバリー種の鴨の肉をローストし、カシスと赤ワインのソースで味わう料理で、カシスの葉を煮出した「カシス茶」を添えてサーブします。
「伝統的なフランス料理で、ソースに用いるカシスについては、これまで冷凍カシスのピュレを使っていたのですが、これを『あおもりカシス』に変えてみたら、よりふくよかでキレのあるソースに仕上がったんです」
栗田シェフは、今年、青森県の生産者のもとを訪ね、その熱意に感銘を受けたひとり。なかでも「あおもりカシス」の栽培地は印象深かったと言います。
「無農薬栽培で、収穫は手摘みですから、生産者さんのご苦労は大変なものですが、収穫期は1年のうちわずか1か月ほどなので希少価値は高い。
そして何より素晴らしかったのは甘味と酸味のバランスのよさ。『あおもりカシス』は収穫期が短いため、今回のフェアでは濃縮ジュースの『Cassis de Aomori』を煮詰めて調理しましたが、このジュースも生の果実と遜色ないおいしさで、さまざまな料理に応用できそうです」

「青森県産仔鴨のロティ あおもりカシスのソース 黒トリュフとコンテチーズのガレット」の鴨肉は、少しずつ温度を上げながらローストし、最後は高温で仕上げる。
鴨肉に合わせるソースは、カシスの濃縮ジュース『Cassis de Aomori』(左上)を煮詰めたものに、赤ワイン、エシャロット、鴨の出汁、グラス・ド・ビアン(高濃度のフォン・ド・ヴォー)を煮詰めたものを合わせて作る。

忙しい仕事の合間をぬって、自らアポイントを入れて積極的に生産地を訪ねる努力を続けている栗田シェフは、産地見学から刺激を受けることが多く、青森県でも「あおもりカシス」は無農薬栽培なので、「葉も活用できる」とピンときたそうです。

鍋にフレッシュな「あおもりカシス」の葉と水を入れ、10分ほど煮出すとさわやかな風味のカシス茶になる。

「さわやかに香り立つ『あおもりカシス』の葉を料理に活かしたいといろいろ試して、最終的にカシス茶に落ち着きました。ものすごくおいしいお茶が完成したことを素直に喜んでいます。それにこのお茶からは、山の上にあったあの果樹園の香りが感じられるんですね。お客様においしさだけでなく、素敵なストーリーをお伝えできると思うと、こちらもワクワクしてくるんです」

「青森県産仔鴨のロティ あおもりカシスのソース 黒トリュフとコンテチーズのガレット」。カシス茶は数に限りがあるため、予約する際に要確認。

「ホタテガイ」「大和しじみ」「黒にんにく」など、
青森県には魅力的な食材がいっぱい

青森県を訪ねた栗田シェフが、現地でインスピレーションを食材はほかにもたくさん。
そこで、「青森県を代表する食材のうち『ホタテガイ』や『黒にんにく』などを用いた料理にもチャレンジしてみました」と言うと、あと2品、オリジナリティー溢れる料理を紹介してくれました。
そのひとつが、「ホタテガイ」と「大和しじみ」の旨味が詰まった「青森県産ホタテガイと小川原湖より届く大和しじみのアスピック」です。

「ホタテガイはフランス料理ではよく使う食材で、表面だけさっと火を通してジューシーに仕上げると旨味が感じられて食感も楽しい。ひもからはよい出汁が出るので、今回はそれも活用して『大和しじみ』のブイヨンと合わせました。
しじみという食材はどうしても“和”の風味になりがちなので、フェアでは『大和しじみ』の身にオリーブやケッパーなどを合わせてタプナードに。しじみのブイヨンにもエシャロットやタイム、白ワインを加えてフランス料理らしさを強調しました」
この料理もなかなかのデキと自負する栗田シェフは、「できたら今秋からのコースに入れてもいいかなぁ」と、現在検討中とのことです。

「青森県産ホタテガイと小川原湖より届く大和しじみのアスピック」。アスピックとは、肉や魚介の煮出し汁をゼリー状に固めたもの。「ホタテガイ」のゼリーの上にのせた白いクリームにも「大和しじみ」の旨味をきかせている。緑色のソースは、そのクリームにフヌイユのオイルを混ぜたもの。魚介と相性のよいジャガイモのスフレも添えて。

そして、もうひと品が、「仔羊鞍下肉のクレピネット 青森県産黒にんにくのマルムラードと根にんにくのフリット 青森県産夏野菜のコンフィ」です。
仔羊の鞍下肉(肩ロースの首に近い部分)は開き、内側にバジルのピュレをぬってロール状に。これをあみ脂で巻いたら、サラマンダーでじっくり焼いて仕上げていく料理です。
「本来、仔羊はにんにくと相性がよいのですが、羊肉の状態によってはにんにくの香りが勝ちすぎてしまうことも。ところが、にんにくの代わりに熟成させた『黒にんにく』を使うと、そうしたこともなくうまくいくんですね」
しかも栗田シェフは、「黒にんにく」をピュレとジャムの2種類に仕立てて、仔羊鞍下肉のクレピネットに添えました。

「黒にんにく」は、白いにんにくを3、4週間、高温・高湿という環境で熟成させて作る。熟成すると糖度が増して、食感もドライフルーツのように変わる。

「ひとつは、『黒にんにく』にアンチョビ、オリーブ、ケッパーなどを加えて作ったピュレで、こちらは『黒にんにく』のやわらかな風味を楽しんでもらうためのもの。もうひとつのほうは『黒にんにく』を甘酸っぱいジャムのように煮詰めているので、少量添えてアクセントとして味わっていただけたらと思います」

「仔羊鞍下肉のクレピネット 青森県産黒にんにくのマルムラードと根にんにくのフリット 青森県産夏野菜のコンフィ」。羊肉の下を円形に彩っているのが「黒にんにく」のピュレで、右端に少量添えられているのが、「黒にんにく」をジャムのように濃厚に仕上げたマルムラード。
仔羊の料理に用いたコリンキー、ズッキーニ、マイクロトマトも青森県産。大きさを揃えてカットしたものをコンフィに。その上にフリットにして添えたのが、同じく青森県産の「根にんにく」で、ほのかなにんにくの香りとシャキシャキとした食感が特徴。

ひとつの食材を複数の異なる風味にアレンジし、それを同じに皿に盛ってゲストを楽しませる——。こうした繊細な演出も栗田シェフならでは。シェフの料理が評価される理由のひとつです。

日本各地の食材のよさを引き出す料理講習会にも尽力する栗田シェフ。その技術とアイディアが詰まった青森フェアには、「食」を愛する人にとってさまざまなヒントが詰まっているはずです。

栗田雄平さん
1979年、東京都生まれ。「シェ・トリガイ」「シェ松尾」などの名店で腕を磨き、渡仏。帰国後、「レストランFEU」の副料理長、「ロテスリーレカン」の料理長を経て、2020年、「銀座 レカン」の8代目料理長に就任。

銀座 レカン(L’ecrin)

東京都中央区銀座4-5-5 ミキモトビルB1F
TEL 03-3561-9706
11:30~13:30LO、17:30~22:00(20:00LO)
無休

青森フェア 開催期間 2023年8月1日~31日

問い合わせ先
青森県農林水産部総合販売戦略課
TEL 017-734-9573


取材・文/上村久留美 撮影/依田佳子