はかた地どり

<ACCI Gusto 2021 鈴木弥平シェフ デモンストレーション>
福岡県自慢の食材に星付きシェフがさらに磨きをかける

はかた地どり

「ACCI Gusto 2021」の会場内に設けられた食材、調味料、調理機器や調理備品などの多彩なブース。人気の展示のひとつに、天然のクエやマダイ、地鶏、八女茶や牛乳など、多くの食材を揃える福岡県のコーナーがありました。鈴木シェフは、その中から「はかた地どり」と「八女茶」を選び、それぞれの持ち味を最大限に活かした料理で参加者を魅了しました。

はかた地どりのテリーヌ、レバーペースト、ハムの3種を盛った「はかた地どりの前菜」。脂が少ないために火入れが難しいとされるむね肉も約60℃で1時間ほど加熱するとしっとりジューシーなハムに仕上がる。

鈴木弥平さん
1967年生まれ。「ピアットスズキ」オーナーシェフ、「トラットリア・ケ・パッキア」オーナー。19歳でイタリア料理の道へ。平田勝シェフに師事し、平田氏独立に際して「クチーナ・ヒラタ」へ。1992年から1年間イタリア料理留学し、イタリアの料理学校で学ぶ。その後、単身でシチリア、トスカーナ、リグーリア、ピエモンテなど各地のリストランテで研鑽を積む。帰国後の1993年、「ヴィーノヒラタ」のシェフに就任。2002年に独立し「ピアットスズキ」を開業。伝統的なイタリア料理を基本としながらも、旬の素材の持ち味を活かした料理を提唱。2007年から2021年、「ミシュランガイド東京」一つ星獲得。2018年、ゴ・エ・ミヨ (Gault&Millau)獲得。2019年、本場イタリアで行われたパネットーネコンテスト5大会に出場。日本人初、すべての大会でファイナリスト、FIPGC主催では金賞受賞。

名店のベテランシェフとして尊敬を集める鈴木弥平シェフは、福岡県の豊富な食材の中から「はかた地どり」を選ぶと、さまざまな部位を使って3種の前菜を披露してくれました。シェフは日頃から食品ロスを出さないような仕入れを心掛けていて、たとえば鶏肉の場合は1羽丸ごと仕入れるようにしています。だからこそ、ささみやもも肉を用いたテリーヌ、むね肉を使ったハム、レバーのペーストというような提供の仕方ができるというわけです。
「なかでもレバーペーストは思い出のひと品として、落合シェフのレシピで作りました。トスカーナ地方のレバーペーストというと、一般的にザラッとした舌触りで重い感じなのですが、これは落合流にアレンジされているのでフワッとしてなめらか。ちょうど僕が『イタリア料理を世界に向けて発信していくにはどの程度までアレンジが許されるのか、あるいはまったく変えるべきではないのか』と悩んでいた頃、落合シェフのこのレバーペーストに出会い、『自由にやりなさい』と背中を押された。そんな思い出の味なんです」

福岡県職員も参加し、「はかた地どりの特長は、旨味の強いしっかりとした肉質だかサクッと歯切れがよいこと。また八女茶の豊かな風味の秘訣は昔ながらのていねいな栽培法にあります」と説明した。

鈴木シェフは無類のお茶好きでもあって、「八女茶のまろやかな甘味と旨味を活かした料理を作りたい」と、もうひとつの食材に八女茶を選んだと言います。
実はシェフの実力を評価する料理評論家やジャーナリーストは海外にもいて、さまざまなコンテストへのオファーが絶えないそうです。これまでにも、パネットーネ(イタリアの伝統的な発酵菓子パン)やスップリ(ライスコロッケ)などのコンテストに出品して、優秀な成績をおさめてきました。
「その時に必ずリクエストされるのが、『どこかに日本のエッセンスを盛り込んでほしい』ということ。それでひらめいたんですね。八女茶でリゾットを作ってはどうかと。お茶はデザートに使われることが多いのですが、天ぷら茶漬けのイメージで、八女茶を含ませたリゾットにエビのかき揚げをのせたら面白いのではないかと発想したんです」
シェフの予想通り、八女茶のリゾットは風味もよく、実際、シェフのお店でも好評だそうです。

チーズやバターが乳化して、ふっくら仕上がったリゾット。「食材の組み合わせは自由ですが、調理の基本は大切にしたい。この時に分離して水分や油分が染み出ていたら、僕はアウトだと思うんですよね」と鈴木シェフ。

「八女茶のリゾット」。八女茶には40~60℃の湯を注いで旨味と甘味を出す。これをブイヨン代わりにゆっくりお米に吸わせるように加熱する。上にのせているエビのかき揚げについては試食用もすべて揚げ立てを提供した。

さまざまな食材が料理人の手によって魅力を引き出されて可能性を広げていく。そして、その発想力が多くの人を刺激してイタリア料理の未来を拓く――。鈴木シェフはじめトップシェフたちは、素材と向き合いデモンストレーションに尽力することで、その大きな目的の一翼を担っています。

最後にデモンストレーションに協力したシェフたちが勢揃い。人気店のベテランシェフたちが裏方に徹し、参加者のためにでき立ての料理をふるまっていた。

はかた地どりのテリーヌ

材料

はかた地どり(もも肉) ・・・ 550g
はかた地どり(ささみ) ・・・ 160g
生ハム ・・・ 4枚
塩 ・・・ 5.5g
マデラ酒 ・・・ 15g
ポートワイン(赤) ・・・ 15g
ゼラチン ・・・ 2枚
黒コショウ ・・・ 適量


作り方

1. はかた地どりを塩、黒コショウ、マデラ酒、ポートワインに漬けこむ(1日)。
2. ささみに生ハムを巻く。
3. 1 ⇒ ゼラチン ⇒ 2 ⇒ ゼラチン ⇒ 1 の順にテリーヌ型に敷き詰め、160℃のオーブンで40分火を入れる。

はかた地どりのレバーペースト

材料

はかた地どり(レバー) ・・・ 300g
牛乳 ・・・ 100g
水 ・・・ 100g
塩 ・・・ 10g
バター ・・・ 60g
V.O.(ブランデー) ・・・ 適量
マデラ酒 ・・・ 適量
生クリーム ・・・ 100g
エシャロット ・・・ 20g


作り方

1. はかた地どりのレバーを掃除し、牛乳、水に1日漬け、血抜きをする。
2. バター、塩、スライスしたエシャロットを軽く炒め、水気をきった 1 を加えて水分が飛ぶまでさらに炒める。
3. 2 にマデラ酒、ブランデーを加えてアルコールをとばし、適度に水分が飛んだらミキサーで回して裏ごしをする。
4. 6分立てにした生クリームと 3 を合わせる。

八女茶のリゾット

材料

八女茶 ・・・ 250ml
カルナローリ米 ・・・ 80g
エシャロット ・・・ 10g
バター ・・・ 12g+5g
パルミジャーノ・レッジャーノ ・・・ 5g


作り方

1. 手鍋にバター(12g)、スライスしたエシャロットを入れて軽く炒める。
2. エシャロットに火が通ったら、カルナローリを加え、カルナローリが温まったら八女茶を加えてリゾットを炊く。
3. リゾットが適度な硬さになったらバター(5g)、パルミジャーノ・レッジャーノを加え、しっかりと混ぜ合わせる。

はかた地どりのハム

材料

はかた地どり(むね肉) ・・・ 1枚
水 ・・・ 100ml
塩 ・・・ 5g 
グラニュー糖 ・・・ 5g 


作り方

1. はかた地どりと水、塩、グラニュー糖を合わせて真空包装して、冷蔵庫でひと晩寝かせる。
2. 1の水分を取り、真空包装をし直して58℃で1時間火を入れる。